現代は情報過多であり、インフルエンサーなるものが真実でないことを発信すると、フォロワーはそれを真実だと思い込んでしまう時代でもあります。
そしてそれが「集団の思い込み」を形成し、同調圧力として周囲の人に考えを押し付けてしまう危険性があります。
わたしも過去にこの気持ち悪い同調圧力に振り回された一人です。
例えば組織やチームでの飲み会で、参加は強制ではないのに「行きたくないけどみんなが行くから行かなきゃ・・・」と自分を偽って行動したことがあります。
結局そこでは何も得られず、ただ自分の時間を無駄にした後悔とやるせなさが残りましたね。
皆さんも似たような経験があるのではないでしょうか。
私は今では、それぞれ個人が自分の意思や信念に正直に行動できたらいいのにと思っています。
なぜなら、自分の信念と行動が一致していないと自己肯定感が低下し、精神面に多大な悪影響を受けてしまうからです。
では、どうすれば同調圧力に対抗できるのか。
そのヒントを得られるのがトッド・ローズ氏(門脇弘典 訳)の「なぜ皆が同じ間違いをおかすのか-『集団の思い込み』を打ち砕く技術」という本です。
気持ち悪い同調圧力の原因
名声バイアス
これは権威性の高い肩書を持つ人や、有名人の発言を信じる傾向にあるというバイアスです。
「もうすぐ世界は終わる」という小学6年生の言葉は信じなくとも、医師や科学者から同じことを聞かされれば、より重く受け止めざるを得ないだろう。
「集団の思い込み」を打ち砕く技術 54ページ
SNSでもフォロワーが多いアカウントの人の発言は、明らかにおかしいことでも一瞬「そうなの!?」と納得しそうになりませんか?
これも名声バイアスが影響しています。
さらに、それなりの人数で構成されているコミュニティが出来上がっていたら、一種の宗教のようになってしまい厄介です。
※これはあくまで一例で、全部が全部悪いと言っているわけではありません。根拠のあることを発信されている方もいます。
そのコミュニティの中で、少しでも疑問を持とうものなら周りの多数から圧力をかけられて自分の意見を潰されてしまいます。
発信されている情報に振り回されないためにも、疑問を持ったら自分で入念に調べることが大切です。
所属への欲求
人間は他人と協力し、助け合って進化してきた生き物であり、現代の人も仲間外れにされることを避ける傾向があります。
皆さんも他の人と違う行動をとるのは気が引けませんか?
その理由は、オキシトシン(絆ホルモン)という物質が影響しているためです。
これ(オキシトシン)は絆ホルモンとも呼ばれ、家族をはじめとして自分のコミュニティのメンバーへの愛情を高めるはたらきがある。
「集団の思い込み」を打ち砕く技術 68~69ページ
また、オキシトシンは内輪の間違った考えも受け入れやすくしてしまうことがわかっています。
私も過去に、行きたくもない飲み会に参加したり、本当は帰りたいのにみんなが解散するまで我慢したという経験があります。
きっと疎外感を感じるのが怖かったんでしょうね。
これをわかりやすく表現したエピソードが、ゲーム「LOST JUDGEMENT:裁かれざる記憶」に出てくるいじめのお話です。
ある一人の少女が教室内でいじめられており、クラスメイトは「良くないことだけど、みんな見て見ぬふりをするから声を上げづらい」と見過ごします。
主人公があるきっかけを生徒たちに与えることで、「いじめはやめろ」と加害者に声を挙げられたんですね。
個人の思い込み
著者が行った調査で、「成功した人生とは何か」という質問に対して以下の選択肢のどちらかを選ぶものがあります。
- A 自分の興味と才能に沿って行動し、好きなことを最大限追究する。
- B 金持ちになり、輝かしいキャリアを気づき、名声を得る。
そのあと、世間一般の人々はどちらを選ぶかを予測させます。
結果は、「自分ではAを選ぶ」という回答が97%を占めた一方で、「多くの人はBを選ぶと思う」という回答が92%にのぼった。
「集団の思い込み」を打ち砕く技術 15ページ
つまり、実際は大多数が自分と同じ考えを持っているのに、他の人は自分と違う考えを持っていると思い込んでいるということです。
そうした思い込みから、多数派に背くことを恐れて(実際はみんなと同じ意見だが)自分の意見を言えなくなってしまいます。
「集団の思い込み」を客観視できるゲーム
ペルソナ5R
私もドハマりしたこのゲームは、大人の悪行に抵抗する高校生たちを描いたもので、「集団の思い込み」を具現化したステージ=メメントスが登場します。
「同調圧力」や「集団の思い込み」を手っ取り早く体験するのにうってつけのゲームです。
興味がある方はぜひ。
公式HP:ペルソナ5R(プロモーションではありません。ただの個人的なおすすめです。)
同調圧力に屈しないために
自己一致を高める
自分の信念と実際の行動にズレがあることを「認知的不協和」といい、それが行き過ぎると「自己不一致」の状態に陥ると本書で述べられています。
その反対が「自己一致」、つまり自分の信念に沿って行動できることです。
著者も「自己不一致」に陥り、自分を見失っていたと述べています。
そこで著者が行ったのが「日記をつける」ことだったのです。
日記の中で、私は自分の同調ぶりに疑問符を付けた。
自分の良いところと悪いところを認め、自分に嘘をつく内容と状況を書き出した。
「集団の思い込み」を打ち砕く技術 231ページ
それによって自分の行動を客観視でき、自分の本心が見えてきたのだそうです。
また、自己一致を高めるには自分のことを理解する必要もあります。
それについては、八木仁平さんのチャンネル(八木仁平の自己理解チャンネル)もおすすめです。
再考する力をつける
当ブログでも「再考」について記事を書いています。
自分が無知であることを自覚し(無知の知)、自分で調べ、正しい情報を認識することが間違った「集団の思い込み」に飲み込まれない方法でもあります。
また、「その情報は信用できるのか?」と一度疑問をもつことも、思い込みに囚われないポイントです。
感想
集団心理、同調圧力が起きるプロセスがわかる一冊でした。
私は昔から同調圧力が嫌いで気持ち悪いと感じており、この本から「自分の信念を見失うな」と言われたような気持ちです。
また、この同調圧力は日本で顕著だと「思い込んで」いましたが、海外でもよくあることなんだなと実感しました。
まあ同じ人間ですからね。
まとめ
「集団の思い込み」はネットワークが普及した現代では、過去以上に深刻な問題なのではないでしょうか。
思い込みや同調圧力に飲み込まれないためには、自分の信念を見失わないこと=自己一致が重要です。
正しい情報を見極め、自分を犠牲にしない生き方を目指しましょう。
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